部長と二人の夜

沈んだ気持ちで熱いシャワーを体にじゃーじゃーと当てていると、隣の杉本先輩が話しかけてきた。
「疲れただろ。部長と相部屋で大変じゃないか?」
いや、俺が風呂に行くことになったせいで若干大変になりそうなんですが・・・。
だが、そんなことを杉本先輩にぶつくさ言う気はない。
先輩はみんなから慕われてるし、俺もよく頼りにさせてもらってる優しい人だ。だから、俺も今の状況は別としてなるべく隠さずにしゃべることにした。
「いえ、全然大変とか思わないですよ。俺、いつも部長と隣の席だし、部長が怒り出すのにも結構慣れっこですから。まあ、俺が悪いから怒られまくってるだけなんで。」
すると、杉本先輩は真顔で俺を遮った。
「それは違うよ犬塚。雷電部長は犬塚のことを気にかけてるんだ。だから、あんなに毎日君をしかりつけてるんだよ。」
「うげえ、マジっすか?!」
先輩は確信を持って強くうなずいた。
「犬塚は確か、入社して5年経ったよな?」
「はい。最初から部長の隣でしごかれまくりました。」
「君が来る前、部長の隣の席には誰が座ってたと思う?」
「え?分かんないです。新卒でも中途でも、やっぱ1年持たなかったって感じですか?」
「そうじゃなかったんだ。雷電部長はあそこの机を二つ占領して一人きりだった。それで、特に男子社員を片っ端から呼びつけて怒りを爆発させていたよ。」
「うわあ・・・。」
自然と目に浮かぶから怖い。
「ほんとに小さなミスも許されない、殺伐とした職場でね。次は誰に雷電様の雷を落とされるのかってみんなびくびくしてて、退職者も君が思う以上に多かった。
当時の雷電部長は正真正銘の一匹狼だったんだ。まさか、こんなに丸くなるなんて、上の社員たちは想像もしてなかったと思うよ。」
「雷電部長って、あれで丸くなった後なんですか?うへえ!」
先輩は俺の飛び上がりそうな驚きようを見て優しく笑った。おもしろそうに。
「いや、むしろ丸くなる途中かなと俺は思ってる。雷電部長は犬塚を自分の息子みたいにしかり飛ばしてるように見える。君にはなんでも言いたいことを言えるんだよ、嫌みやひがみなしで。
雷電部長が犬塚を見るときの目って、二度見しそうになるくらい優しいんだぞ。気づいてないか?」
俺のチンポがぐんぐん硬くなるのを感じて、必死に脳内をぐちゃぐちゃにした。
「マジっすか?!そんな優しい部長の目なんて見たことないっすよ!雷落とされまくりなんですって!」
「確かに、犬塚はこの職場の避雷針だな。おかげで重たかった空気も和らいで、みんな少しずつ笑顔が出せるようになった。雷電様の雷がぱったりとやんだんだよ。」
「俺って避雷針なんですか・・・。」
「すまん、例えだよ。でも、これだけは知っておいてほしい。雷電部長は犬塚を決して冷酷には扱っていない。
犬塚が来てからあの部長が明るくなったんだ。きっと、君のことをすごく気に入っているんだと思うよ。部長の怒りを理解して受け止めてくれる君のことをね。」
俺のチンポは限界だった。ああ、早く雷電部長に謝りたい。それから、毛の生えた体中を優しくなで回してあげたい。
 
杉本先輩が「突然連れ出して悪かったね。」と気遣うのを軽く受け流して、俺たちは部屋の前で分かれた。もちろん、中には雷電部長がいるはずだ。おそるおそる入っていく。
明かりはついているがテレビは見ていないようだ。雷電部長は座卓で一人飲んでいた。戻ってきた俺のほうを見ようともしない。
俺は静かに雷電部長のすぐ隣に座った。大量の缶ビールが空になっている。
まだ入っている感を取り上げると、飲み干したばかりの大きなビニールコップに残りを全部注いだ。
「早かったな。」
うなるような低い声だった。俺は泡の多くなってしまったコップを部長の前に置いて、酒で赤くなりはじめた上司の目を見つめた。
「雷電部長。すみませんでした。もう勝手に出ていったりしません。ほんとうにすみませんでした。」
「泡だらけじゃないか。ワシの腹をこれ以上膨らませる気か?」
「すみません。」
大きな毛だらけの手がコップを掴むと、ぐいぐいぐいっと一息に飲み干してしまった。これで缶はみんな空いてしまった。
どうしよう。買い出しに行くべきか?
おどおどする俺の背中に、太い肉の感触が走った。雷電部長が腕を回してきたからだった。
「いや。ワシがお前以上に期待してしまったんだ。あのまま朝までってな。お前が悪いんじゃない。」
部長の目はすげえ優しかった。それに、ちょっと燃えていた。俺の顔をじっと見てる。
「かわいいなあ、犬塚・・・。」
突然、いかつい髭面がぐっと迫ってきて、俺は唇を奪われた。食いちぎられたと言ったほうがいい。分厚い舌をねじ込まれ、俺の舌が強引に吸い出されて、激しく食らいつかれるような酒臭いベロチューを浴びた。
「雷電部長・・・。」
くぐもった声で名を呼びながら、俺も精一杯応戦する。酒とタバコの混ざり合った親父臭い口臭が俺の性欲を一気にかき立てる。
俺が両手で髭面を押さえて口内をむさぼり回すと、部長も同じように両手でこっちを固定してきた。大人の男同士の、唾を飲み合う本気のベロチューがべろべろべろと長い時間続いた。
「また飲み直しますか?」
舌と舌をぐるぐると絡ませながら俺が聞くと、雷電部長は即座に首を振った。
「もういい。犬塚にさっきの続きをやってほしい。ワシの体を一晩中喜ばせると言っていただろ?うそじゃないよな?」
「ほんとうですよ。部長がいやがっても体中なで回して、気持ちいいところをいじり回してあげるつもりです。いやですか?」
「いやじゃない。やってくれ、犬塚。朝までワシをいじり回してくれ。」
ぶっちゅうっとディープキスしたまま、二人で倒れ込むように布団の上に移動した。そのまま、夢中でお互いの浴衣を剥ぎ取り合った。
熊さん、すげえ興奮してる。56歳の加齢臭が燃え上がるように匂う。
今夜は熊さんとたくさん遊び明かそう。いっぱい気持ちよくしてあげますからね。