鉄の牛のケツの穴

「今度の練習なんだが、キャンセルにしてくれねえか?」
平日の夕刻に権藤がぶらりと事務所(仮設便所の横ではなく、本当の事務所)にやってきた。
「どうしたのかね、いったい。」
めったにない申し出に驚きながら、使用取り消しのための書類を机に置いた。
権藤が少し前屈みになりながら書類を書きはじめた。
ワシは椅子から立ち上がり、書棚でも見にいくようなふりをして権藤の後ろに回る。
相変わらずのばんばんに張り出した、ラガーマンらしいでかケツじゃなあ。
縦にくっきりと浮かび上がる割れ目の奥は、今日もすこぶる臭いんじゃろう。思わず唾を呑み込む。
「選手がそろわねえのさ。急に旅行に行くだの言ってきやがってなあ、若い連中がよ。」
「前前から決まっとったんじゃないのか?」
「らしいぜ。ったく、もっと早く言えって言ってやったけどなあ。」
「あんたは怒りっぽいから、後輩たちは遠慮してしまうんじゃろう。」
「俺が?こんなに優しいおじさん、いないよ?」
二人とも声を上げて笑う。権藤のこういう茶目っ気がワシは好きだ。
「それとなあ、古賀の奴が風邪で寝込んでんだ。この時期に珍しいぜ、しかも脳味噌まで筋肉の古賀がなあ。」
書類を書き終えてこちらを向いた権藤の顔は、心なしか曇って見えた。
「脳味噌まで筋肉はあんたじゃろ、監督さん。確かに、古賀さんが体調崩すなんぞ聞いたことはないが・・・。」
「書いたぜ、これでいいか?」
体のでかい親父の隣に行き、書類に目を通す。
「はいはい。オッケー、オッケー。」
ふいに、権藤の巨体がワシのほうへ一歩近づいたので、体と体がぴたりとくっついた。
「おい、公衆便所もう直さねえ気だろ。俺あ分かってるぜ。」
 
数分後、ワシはアパートの一室に権藤監督を招き入れていた。
もちろん、そこはワシの家。こんなことになるとは、夢にも思わなかった・・・。
「すげえな、公園の目の前じゃねえか。」
「古賀君が昨日ジョギングでそこの道を通らなかったのも知っとるよ。」
「へえ、さすが男マニアだな。」
権藤が自分でばたん!と玄関のドアを閉めた。
「靴、脱いでいいぞ。」
のどがからからになってくる。
上がり口に太い足を置いた権藤が、ここに来る前に事務所で言ったのと同じ質問をしてきおった。
「で、仮設じゃない便所はどこにあるんだよ。昼間から糞してねえから、もうぱんぱんだぜ。」
「こっちに来てくれ・・・。」
無言でワシの寝室までついてくる。カーテンを閉めたままの暗い部屋。
明かりをつけようとする手を、監督の大きな手が押さえた。
「このままでいい。」
その手を掴むと、敷いてある布団の近くまで引いていった。のどがからからじゃ。
なおも無言で立つ権藤の巨体は、暗い室内にいっそう威圧的な陰となっているようだ。
ワシの部屋に鉄の牛が!ワシの部屋に鉄の牛が!
監督に見守られながら、ワシは布団に仰向けになると、
口を大きく開けてみせてから、すっかりたんの乾いた声で、懇願した。
「ここ。この口の中に、全部出してくれ。監督さんの糞、この便器に思いっきり出してくれ。」
返事はない。顔も動かさない。
ただ、無言で、巨体が前に出たかと思うと、すっと、太い足がワシの体をまたいだ。
かちゃかちゃ、じいいいっ。
黒い足が動いて位置が微調整される。ズボンを下ろす音がする。
大きな黒い陰が、ワシの顔めがけて落ちてきた。
どっしりとして、真っ黒な、毛深いでかケツだった。
「どっこらしょ。」
腰を落とした拍子に鼻とケツの穴がぶつかった。
「うっ、くせっ!ああ、くせっ・・・!」
ぶりりりぶりぶりぶりりぶりっ!!
屁というのはこんなにうるさくて、温かいものなんだな。
鉄の牛の腸内の温度と濃厚な卵の臭みをたっぷり含んだガスを、鼻に食らう。
放屁の勢いで、数滴の下痢臭いしぶきがかかる。
穴の中にどんな極悪な下痢糞が控えているか、容易に想像が付いた。
病的な呼吸音を立てて、監督の屁の匂いを嗅ぐ。尻の匂いを嗅ぎ回す。
また足が動いて、いよいよ毛だらけのケツ穴が口の真上に来た。迷わず、舌を伸ばす。
「うはっ、にげえ!くせえ!監督さん!」
なんてくせえケツ穴だ!くせえ!くっせえ!
ざらざらした剛毛の奥に、汗と糞でぬるついた穴がある。夢中でねぶる。
口で割れ目に吸い付き、苦みのきついケツ穴に舌をねじ込む。
べろべろなめると、舌が糞カスだらけになる。
ケツ毛にからまった乾いたカス、穴のひだにこびりついた湿ったカス。くせえし苦い。
本当に、きったねえケツ穴だぜ、権藤!
いったい、何日風呂に入ってねえんだ!
50代後半のラガーマンが、ワシの顔にまたがって、ケツを突き出してやがる。
今なめているのは、ワシが知る中で一番不潔な、精力絶倫のノンケ親父のケツの穴だ。
鉄の牛のケツの穴、たまんねえ・・・!
と、穴がぐぐっと開いたかと思うと、舌先にぬるっとした、粘膜とは違う温かい感触が伝わった。
ものすごく苦い。これは!!
ぶりっ、ぶじゅぶじゅぶじゅぶじゅじゅぶじゅじゅぶじゅじゅじゅじゅ!!
「んげほおっ!!」
下痢だと思い当たったときにはもう、あまりに苦すぎる下り便の第1波に、その場で嘔吐していた。
なんと権藤は、ワシが下痢を吐き出すのもかまわずに、どっしりした尻を無言でぐいぐいと押しつけてきた。
ぶいいいいいっ!極悪な匂いと味の付いた屁が口の中に放たれ、くぐもった音を立てた。
「まだまだ出るからな、便器じじい。・・・ふんぐううっ!」