鈍感な校長

黒田が苦手な尻拭きを終えて便所を出てから、ワシは早速どんぶりを回収した。
ほおう、と思わず溜息が出る。ほっかほかの見事な糞どんぶりがこしらえてあった。
机に乗せようと持ち上げると、ずしっと重い。おそらく1キロ近くあるのではないかな。
ごろごろと太い芋の山から、糞の湯気がもうもうと上がっている。くせえなあ。
黒田は、排便後の開放感に浸っているのか、便所の前で大きく背伸びしながら深呼吸している。
どれ、ひとつ鎌をかけてみるか。
 
「おはようございます、黒田さん。」
「ああ、管理人さん。いつもご苦労様です。」
「早朝の散歩はいかがですかな?今日は空気が澄んで気持ちいいですなあ。」
「いやあ、今日はいい天気になりそうです。こんな朝に公園の中を歩くと特に気持ちがすうっとしますよ。
今、便所から出たとこでして。」
黒田が、にかっと歯を見せる。
「歩いて腸が刺激されましたかな?」
「そのとおりです。今日もすこぶる快便でした。」
「すこぶるですか!うらやましいですなあ。黒田さんはいつも快便なのですか?」
「ええ、恥ずかしいですが、超が付くほどです。自分でもたまげるくらい出ますよ。」
分かっとる分かっとる。
口の中のトイレットペーパーをくちゅーっと舌でねぶり、黒田の尻穴に付いていた糞カスを味わいながらうなずいた。
「今朝も山のように出してしまいました。食べ過ぎかもしれません。ははは。」
見ていたのか。どんぶりには気づかなかったのだろうか・・・?
口髭を揺らして苦笑する黒田校長に、本題を投げてみた。
「黒田さん、実は先週も例の造形をやりましてな。よかったら今度ワシの家に見に来ませんか?」
「おお、ぜひ見せてください。管理人さんの作品には、何かとても興味を引かれるものがあります。
おや、それは何ですか?」
そら来た。黒田がワシの両手の中をのぞき込んできおった。
「造形の材料になる粘土です。大きいでしょう?」
両手を開いて、1本のぶっとい塊を見せてやる。
「ほおう・・・。ずいぶん大きい塊だ・・・。」
黒田は、感心したように、自分の糞をしげしげと観察した。
急いで一番ぶっといのをサランラップにくるんできたからのう。ほっかほかじゃ。
「元々茶色の粘土なんですねえ。てっきり、あれは後から色付けしているのかと思っていました。」
「材料をそのままこねて形にしていましてな。そのほうが、粘土の良さが出るんですわ。」
「そうでしょうねえ。模様のような色の違ったところも元々だったとは・・・。」
今日は大根とインゲンと、鶏肉のような食べカスが見えとる。
「全く同じ材料は手に入らんのですよ。毎回、違う色、違う形状、違う質感です。
だからおもしろい。こねてみて、造形を決めるんです。
何本か合わせてこねることもします。即興みたいなもんですわ。
まあ、粘土そのものの質が基本的に上等ですから、迷うことなく楽しく作れます。
どうです、手に持ってみますか?」
黒田が差し出してきた両手に、59歳の校長のでか糞を乗せた。
ラップ1枚巻いただけの、ノンケ親父の尻から出たばかりの糞を握らせる。
「おお、重い!ずっしりきますなあ。」
そうじゃろう?黒田さん、あんたがさっき、男臭くうんうんうなって、一生懸命ひり出した芋糞じゃよ。
「それに、すごく温かい・・・。」
「元々少し保温してあるようですな。人肌くらいかな。」
「確かに、ほかほかしてる・・・。堅さもいい具合ですね。握りごたえがある。」
自画自賛しとるな、校長先生。
「鼻を近づけてみてください。特徴的な匂いがしますぞ。」
「どれどれ。」
黒田の鷲鼻が茶色の糞の表面をくんくんと嗅ぎ回す。
「うっ・・・くっ・・・!」
校長先生のまじめな表情が、にやあっ、と崩れた。
「臭いですな!すごく特徴のある匂いだ。ラップの外からでも・・・うわ、くせえ!」
「手でこねると、そりゃもう臭いですわ。質がいいから、匂いなんか気になりませんがね。」
「いったい何で出来てるんですか?」
糞全体をいとおしそうに撫で回し、もう一度鼻に持っていって「くせ。」とつぶやいてから、
黒田がワシの手にでか糞をそっと戻した。
「いや、おもしろい物を見せてもらいました。こんな粘土があるなんて知らなかったなあ。
ご自宅にお邪魔するのが楽しみになりました。」
「今週の土曜はどうですか?臭い粘土の造形はいろいろ並べてありますよ。
ゆっくり見てやってほしいもんです。」
「分かりました、土曜にうかがいます。
にしても、まさか作品までこんなに臭いなんてことはないんでしょう?」
「さて。それは来てみてからのお楽しみですよ。
もしかしたら、その場で取れ立ての粘土をこねたりできるかもしれんし・・・。」
「楽しみです。おっと、行かなくては。管理人さん、また。」
「はいはい。黒田さんの快便をお祈りしてますよ。」
「ははは。これ以上糞の通りが良くなったら大変ですよ。
うわ、くせっ。この匂い、何か癖になりますな。くせえ、くせえなあ。」
しきりに手の匂いを嗅ぎながら、黒田校長は歩き去った。
うまそうなでかい尻をゆさゆさ揺らしながら、公園の外へと消えていく。
 
「黒田さん、あんたのぶっとい糞じゃよ。くせえに決まっとろうが・・・。」
手の中でぐいぐいと握り込みながら独りつぶやいて、その手を鼻に持っていく。
「くせっ!」
ラップの片側を剥いて、剥き出しになった黒田の糞にかぶりつく。
口の中に、59歳の尻から出たほっかほかの苦い糞カスと食べカスが広がる。
「んんー、うまい!!」
土曜日は、この親父の糞像を本人に披露するのだ。
そして、四つん這いにして、尻の穴に拳をぶち込んでやる。
黒田校長がこれ以上の快便を垂れ流すように、糞の通り道をがばがばに広げてやる。
ワシの手で男泣きさせて、ぶっとい糞を掴み出してやるぞ!
黒田のでか糞にぱくつきながら、ワシは早くも当日の算段を始めた。
それにしても、59歳の親父の糞は、苦みとえぐみが効いて、すこぶるいい味じゃわい。
校長先生、今日もお仕事がんばってください。