駅の便所で#3 (満員電車で大噴火)

「ただいま信号トラブルにより停車しております。お客様には大変ご迷惑をおかけいたします」
棒読みのアナウンスから10分、電車内は徐々にどよめきはじめていた。
携帯で職場に連絡を入れるリーマン。どこかにメールを送っているらしい女子高生。そして。
 
ふうっ、ふうっ・・・うううっ・・・
俺の右隣に座る50代の親父は、でかい体を振るわせて、小さくうめいていた。
三度目のアナウンスに、強く舌打ちして、早くしろよ・・・と毒づいている。
親父の髭面には脂汗がじっとりと浮かんでいた。
周りはほとんど気にもとめていない要す、というか、不機嫌そうな親父に関わり合いたくないのかも。
けど、すぐ横に座る俺は、親父が急な便意と戦っていることにちゃんと気づいていた。
 
ぐううう、ぐるるるうう・・・
俺にだけ聞こえる、親父の腸の音。腹が下って、一気に便意を催しているようだ。
うううっ・・・はあ、はあ・・・くううう・・・
親父はさっきからでかい尻をもじもじ動かしている。便意をやり過ごそうと必死だ。
すげえ。俺の真横で、強面のガチムチ親父が糞を我慢してやがる。毛深い腕まで汗だくにして。
俺はこの親父の尻が決壊してくれないかと、期待の目で横からガン見した。
 
ぐぶううううっ・・・
椅子の間から長めの重低音が響く。ついに親父がマジで臭い屁をこいた。そして。
ぐびいいいい・・・ぎゅるるる、ぎゅりぎゅりぎゅるるるるう・・・びぶっ、ぐぶううううっ・・・
親父の腹と尻が一斉に鳴り出した。
さすがにすげえ臭いから、リーマンも女子高生もおばちゃんも振り向いた。
あっ・・・がっ・・・うっ・・・
大の男が強烈な便意を一生懸命こらえる声。
ケツの穴を閉めようと、でかい尻を上下に動かしてる。口元を引き締めて、巨体をしきりに揺すってる。
「大丈夫ですか・・・?」
俺はテンパってる親父にわざと体を寄せ、耳元に口をつけると小声で話しかけた。
もちろん、親父には返事する余裕なんてない。
シャツまでびっしょりにして、ううっ、うっ、はあ、はあ、と息も絶え絶えに俺を見る。
見るな、という目だ。助けてくれ、という目にも見えた。そして。
 
うっ・・・うっ・・・うあっ・・・あっ・・・ああっ・・・!!
ぎゅりりぎゅりぎゅりぎゅるるるぎゅるうううっ・・・
ぶりゅっ!!びぶりゅっ、ぐぶぶううううっ・・・
ああっ・・・!!あああっ!!あああっ!!
・・・髭を蓄えた親父の口元が、ふううっ、とゆるんだ瞬間。
ぶじゅぶじゅぶじゅびじゅうううううっ、びぶりゅりゅじゅぶううううっ、びじゅじゅぶじゅぶうううっ!!
耐えに耐えた親父の尻が、ついに大噴火した。椅子がびりびりとかすかに震動する。
車内には耐え難いほど下痢臭い匂いが充満した。
「お父さん大丈夫ですか?」「次の駅で駅員さん呼びましょうか?」
周りの人たちが親父を気遣いはじめた。こうなると、みんな結構優しい。
親父はパニックで顔を真っ赤にして、「すみません、すみません」と何度も頭を下げている。でも。
びちゅっ、ぶいいーっ、びじゅじゅぶ、じゅぶぶぶぶうううっ・・・
衆人環視の中、尻は止まらない。
すげえくせえ。下痢くせえ。
いつも何食ってんだよ!と言ってやりたくなるほど、鼻を突くくっせえ下痢の匂いだ。
臭すぎる。最高だ。
俺は「この下痢糞親父め!!」という目で親父の苦渋に満ちた横顔を凝視してやった。
・・・つもりだったけど、かわいい物を見つめる目になっていたかもしれない。
ガチムチ親父の下痢臭を胸いっぱいに吸い込んで、マジで興奮しちまったからなあ。
 
駅に着いた。ドアが開くや、親父は人並みをかき分けてホームへ飛び出し、ものすごい勢いで階段を駆けていった。
親父の尻が乗せてあった座面からは下痢臭い湯気がもうもうと立ち上っている。現物は付いていないようだ。
誰もがあっけにとられている隙に、俺は広げたハンカチを隣の座面に置き、今まで親父が座っていた場所へと素早く移動した。
すげえ!椅子はぞくぞくするほど暖かかった、親父の尻の温度で。
降りる頃には、ハンカチも、俺のジーンズも、あの親父の尻の匂いでめちゃくちゃ下痢臭くなっちまうんだろうなあ・・・。
ぐへへ。
 
(完)