ロマンスグレーの敗戦#5

「よお、下痢便鶴田。」
改札を出ようと財布を取り出しながら近づいてきた男に俺はそう声をかけた。
品のいいスーツに身をびしっと固め、すらりとした筋肉質な体に精悍な顔つきでさっそうと歩くロマンスグレーの紳士に。
鶴田賢三はびくっとして立ち止まり、こちらを見た。自信に満ちた燃えるような目が少し不安げに宙を泳ぐ。やっと駅員に声をかけられたのだと分かったようだ。
「その呼び方はちょっと・・・やめていただけませんか・・・。」
「いいじゃねえかよ、聞いてる奴は誰もいないんだし。それに、事実だろ?あんたがこの事務所で大量に下痢便垂れたのはさ。」
俺の手招きに、鶴田は苦笑いしながら小さな駅員室の窓までやってきた。近くで見ると、60歳にしては若々しく、相変わらずかっこいい親父だ。情熱的な目の色がいい。
「今日は遅い時間なんですか?」
「当番でね。下痢便はここで降りるの久しぶりだよな。なんか用事?」
鶴田は顔をくしゃっとゆがめた。
「せめて名前のほうを残してくださいよ・・・。今日は友人宅に呼ばれていまして。」
「じゃあ、ちょっと中に入ってけよっていうのも言いにくいか。久しぶりだから少し話したいなと思って呼び止めたんだけど。」
俺は鶴田の朝の敗戦を知るただ一人の人間だ。しかも、ぶちまけた下痢や下痢まみれのズボンの後片づけまでやってやったのだ。あれは臭かった。
特に、くっせえ下痢にぐっちょり浸かったださださのトランクスは今も俺の手元にあって、もうかぴかぴだが未だに俺に60歳の親父のお漏らしの激臭を楽しませてくれる。
何事もなかったかのように肩で風を切って歩いてきた紳士にとっては思い出したくない過去かもしれないが、下痢便鶴田の臭くて恥ずかしい戦跡は今なお俺の身近にあるのだ。
俺が倍も年上の鶴田にタメ口を利いているのも、そういった理由からで、鶴田も拒否しない。あの朝の彼は俺のおかげで助かったのだから。むしろ、鶴田のほうが俺に敬語を使っている。お互い、不思議なもんだ。
「いいですよ。30分くらいなら。少し早く着いちゃったんですよ。」
鶴田は意外にも人なつっこく俺に笑いかけてきた。俺は心の中でガッツポーズ。こいつのパンツの中身をまた見てやろう。
「そりゃよかった。こういう田舎駅の夜は結構寂しくってさ。ま、中に入ってくれよ、下痢便鶴田君。」
苦笑いを通り越して申し訳なさそうに肩をすくめながら、長身の紳士は事務室のドアをくぐってきた。
あの日ブルーシートの上で直立のままぶりぶりと大爆音で敗戦したときの事務机には小さな丸椅子が据えてある。俺は椅子をすすめてから駅員室の窓を閉め、こっそりドアにも鍵をかけた。
「にしても久しぶりだなあ、鶴田。そのあと下痢便の調子はどうだ?お漏らしは続けてるのか?」
俺のからかいに紳士は紳士らしく笑顔で首を振り、さりげなく出された茶をすすった。もちろん下剤入りだ。
「ははは、あれきりですよ。もうこりごりです。あの朝あなたがいなかったらと思うとぞっとします。」
俺がいたからお漏らし計画にはめられたんだけどな、お前は。
「ズボンもパンツも靴下も、全部取り替えてやったもんなあ。還暦のじじいが下痢便垂れたまんまでうろうろしてたら、そりゃひでえ騒ぎになってただろうよ。」
「はい、ほんとうにありがとうございました。ちょうどよく私の体格に合う衣類をお持ちでしたよね。驚きましたし、あれでほんとうに助かりました。」
もう秋も終わりに近づいている。事務室に入った鶴田は仕立てのよい黒のコートを脱ぐこともせずに、夜気に冷えた手を湯飲みで暖めていた。また茶をすすった。
「まあ、正直に言うと、鶴田みたいにお漏らしする男は結構多くてさ。特に通勤ラッシュのときはいるんだよ。
立派なビジネスマンがズボンの尻のところを茶色にして下痢の匂いをまき散らしながら呆然とつっ立ってんのを見ると気の毒で仕方なくってなあ。あれじゃせっかくのビジネスマンも惨めなビジグソマンだぜ。
だから、個人的にズボンとパンツと靴下はサイズをいくつかそろえて置いておいてるんだよ。あんときは鶴田も立派なビジグソマンだったぜ?」
俺は半分うそをついた。それらの衣類の提供は、漏らした親父限定だ。着替える代償として、俺に汚物まみれのズボンやパンツをそのまま差し出さなければならない。
「下痢便鶴田は背が高くて足が長いから、新しいズボンがたまたま丈に合ってよかったよ。」
「それに、汚れ物の処分までしてくださって。ほんとうに感謝しています。」
いやいや、感謝はこっちがしたいところだっつうの。下痢糞べったりのトランクスをありがとうな。
「このお茶おいしいですね。酸味が効いていて。」
見ると湯飲みの中の茶がなくなっている。これはいい。早いペースで下剤を飲んでくれるほうが好都合だ。
「よかったらもう1杯飲んでってくれよ。大したお茶じゃないんだけどな。外は寒いから、体あったまるだろ?」
鶴田が遠慮するのもかまわずに2杯目を注ぐ。ありがたがって両手を暖め、茶をすする鶴田君がこっけいに見える。下剤入りとも知らずに。
「あったまります。近頃は急に寒くなりましたね。」
「寒くなったよな。おなか冷やすなよ?鶴田君はいったんお尻からお漏らしすると大量なんだからさ。」
「ははは、はい。気をつけます。」
「なあ、下痢便鶴田の臭いケツ穴と臭いチンポ、俺に見せてみろよ。年取ると筋肉がゆるむだろ?パンツを汚してないか、俺が確認してやるよ。」
出し抜けにそう言われた鶴田は、一度茶をすすってから、困った犬のようなかわいい顔をした。
「あの、今からですか?」
「当たり前だろ。パンツの中、見せてくれよ。」
この上品な紳士は前回、尻の穴に思いっ切り俺のがちがちマラを突っ込まれ精液をがっつり注入されている。下痢の付いた大人のチンポもなめられている。
俺が年輩の鶴田を性的に好んでいることは、わざわざ告白はしていないが鶴田には通じているはずなのだ。
それでも、やはり人目が気になるのだろう。閉められた窓のほうをちらちらと見ている。俺はその隙に3杯目の下剤、いや、茶を湯飲みに注いだ。
「ここじゃ怪しまれませんか?」
「持ち物検査風にやるから問題ないぜ。窓も曇りガラスだしな。それに、机をはさんでならパンツ下ろしても気づかれない。この前だって、机の脇で着替えただろ?」
鶴田は今度は遠慮せずに3杯目の茶をすすりながら、あの日を思い起こすように中空を見つめた。
盛大に下痢をお漏らししてつっ立っていた鶴田は、たまたま母子に見られはしたがそれだけで何も起こらなかった。俺が鶴田のケツに種付けした後にも窓をたたかれて何人か応対したが、下半身すっぽんぽんの下痢臭ただよう還暦親父を皆黙殺した。世間とはそんなものだ。
「30分時間あるんだろ?俺に身体検査させてくれよ。鶴田君のゆるいケツの穴も、すぐでかくなる息子さんも、検査して正常か確かめたいんだよ。客が来てもばれないようにやるから。」
鶴田は窓のほうを見てまだ迷っている。目をくりくりと動かして、かわいい奴だ。
「っつっても、7時だろ?この時間じゃ、駅員室の窓が閉まってたらほとんどの人が見向きもしないで通り過ぎていくからな。他人に見つかることなんてほとんどないぜ。いや、絶対にない。鶴田君、ケツとチンポ、俺に見せてくれよ。」
鶴田はいきなりぐいと茶を飲み干した。
「お茶もたくさん飲ませていただいて体も暖まりましたし。年を取ると筋肉がゆるむのは確かです。少しの間でしたら、駅員さんにチェックしていただいてもかまいません。お茶のお礼程度でしたら・・・。」
やったぜ。鶴田は下半身を見せることを飲んだ。しかも、スーツに黒コートという上品な紳士が、だ。
「よし、じゃあ早速検査を始めようぜ。机の脇に立って待ってな。床に敷く物を取ってくるから。」
「分かりました。」
下側の棚からブルーシートを取り出す俺の後ろで鶴田が立ち上がる。そのとたん。
ぎゅるるるぎゅるぎゅるぎゅるぎゅるるるるるぎゅるるるるるううううう。60の男の腸が激しく下る長い音が室内に響いた。
ブルーシートを手に振り返った俺の目の先で、下痢便鶴田が「あ、ああ、ああ。」と小さくうめいてコートの上から腹部に手を当てていた。
即効性の高い下剤の効果が早くも現れ出したようだな。へへへ。
さて、鶴田君はどんな臭い糞をブルーシートにぶちまけてくれることやら。今回のお漏らし計画もうまくいきそうだ。