エレベーターでお漏らし#2

ばたん!と個室のドアが閉まる音と同時に私もトイレに到着した。
親父がするするとズボンを下ろし便座に座った。私は親父の隣の個室に入る。
「うううっ・・・ふんっ!ふんっ!」
ぐぴいいいいいいい!
「うはあ!・・・ふんっ!」
ぶいいいいいいい!ぐぴいいいいい!
「んぐううう。」
しわがれた声で一生懸命踏ん張る親父だが、ガスしか出てこない。まだまだ便意が引かないでいるのだろう。
小さなお尻からかわいい屁を連発している。苦しそうだ。
私は70代のカレーライスの詰まった袋を開封した。たちまち、トイレいっぱいにぷーんと下痢糞の匂いが立ち込める。
改めて見ると、年の割になかなか大量の排泄物だ。痩せの大食いってやつだな。ほとんど下痢だ。
熱いうちに頂こう。黄色い下痢汁を、ずずずーっ、とすする。
「にげえ!親父の下痢汁!にげえ!」
ぐびいいいいいいい!隣の個室からまた屁だ。私も熱い下痢汁をずーずーと音を立ててすする。
「くせ!お父さんがエレベーターで漏らした下痢便がうまい!すげえ苦くて癖になりそうだ!」
「うるさい!」
隣から怒号が飛んできた。まだうんうんと踏ん張っている。
ぐぶびびいいいいいいい!
腸内をぐちゃぐちゃと電動ブラシでかき回されて無様に決壊したものの、まだウンコし足りない気がしてトイレに来たに違いない。実際はこの透明な袋に全部ひり出してくれたのだが。
ずずずー、ぐっちゃ。小さな肉ボールを一口で食べる。とたんに、えずくような苦みとハンバーグの食べカスが広がった。
「うえっ!お父さん!ウンコの中にハンバーグが入ってる!おえっ、くっせえ!にげえ!親父のウンコハンバーグうめえ!
ああ!下痢もうめえ!親父のウンコ食いながらのセンズリたまんねえ!おえっ、くせ!ううっ、くせ!いくいく!くせっくせえっ!いくいくいく!ああくっせえ!くせえよお!」
ぐぴいいいいいいいいい!ぶびいいいいいいい!
親父の腸が奏でる悲痛な放屁音に合わせて私は射精した。
「お父さんの下痢糞すごくおいしいなあ。苦くて臭くてたまんないよ。」
「うるさい!」
怒りながらもまだ便意と戦っている老紳士より先に個室から出る。もちろん、お父さんの出待ちをするつもりだ。
 
「お父さん!すごい下痢便ですね!」
個室から出てきた小柄な親父にすかさず近寄り声をかけると、思っていたよりずっと軽い身のこなしでかわされてしまった。
奥さんと一緒のときの穏やかな表情とは全く違う。
苦り切った無言の口元。目で「このやろう!」と攻めている。そして、侮蔑の色をたたえた冷ややかな視線を向けてくる。
私はしつこく、手を洗っている紳士の隣へ行き、洗面台の上で大便の入った袋を再び開封した。
「お父さんのカレーライス。すげえくっせえ。」
ちらっと横目で見た瞬間に、私は下痢の海に口を付けて、ずーっ、ずずーっ、とラーメンの汁でも飲むように、鋭い湯気を立てる下痢汁を大げさにすすった。
そのあまりの変態行為に目を丸くする親父。
「おえっ、くせっ!ウンコもほら。」
茶色い肉ボールをもう一粒つまみ上げると口の中に放り込んでみせた。
「くせ!臭くておいしいよ、お父さんのウンコ。」
「・・・気持ち悪い。」
でも、もぐもぐと自分の糞便を噛んで食べる見知らぬ男を凝視している。ぐちゃぐちゃと、口の中の便カスが見えるように口元を開けて噛む。
今度は温かい袋を両手で持ち上げ、下痢汁を流し込むようにずーずーずーとすすってみせる。親父の顔にみるみる嫌悪の色が広がった。
「うえっ、にげ!お父さんって毎日晩酌してるでしょ?」
「ああ。してるけど、だからなんだ?」
「いや、そういう食生活をする男の人のウンコはすげえ苦い下痢になるんですよ。食べればすぐ分かります。脂っこいし、奥さんに揚げ物出してもらってるんじゃないですか?ハンバーグは昨日の昼に食べたのかな?」
私のあけすけな言葉に、老紳士はあからさまに額にしわを寄せた。
「・・・変態だな、あんた。腹壊すぞ。」
「お父さんみたいな渋い男の糞なら喜んで食べますよ。」
ふいに、大便採取用の器具に目をやった親父。下痢で黄色く汚れ切ったブラシと根本のモーターを見て、また顔をしかめた。
「そのブラシを尻穴の中で高速回転させて腸を一気にこすったんですよ。我慢できなかったでしょ?」
お父さんがふてくされる。恥ずかしさをごまかしているようだ。
「我慢しろと言われたって絶対無理だ。人前で恥かかせてくれたな。そんなことばかりしてると警察呼ばれるぞ。」
どうやら、この紳士にそうする気はないようだ。私に軽蔑のまなざしを向けてはいるものの、排便を強制された器具と自分がこしらえたカレーライスをちらちらと見てばかりいる。
「お父さん、お名前は何ですか?」
「・・・根津だけど。」
いぶかりながら低い声で答えてくれた。
「根津さん、またお会いしたいです。根津さんのウンコ、もっといろいろ食べてみたいな。」
白髪頭を大きく横に振る親父。
「あんたとなんかもう会いたくない。それもちゃんと便所に捨てなさい。俺は行く。」
「根津さん、また会いましょう。根津さんの下痢糞カレー、大事に全部食べます!」
「うるさい!捨てろ!」
こちらを振り向きもせず怒鳴り返してトイレから去っていった。心地よい店内BGMの流れるなか、洗面台周辺が70代親父の下痢臭で満ちてしまった。
しかし、これが私と根津さんの関係の始まりだった。